The Carp-Streamers |
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1. Tiled roof
after roof, white cloud after cloud 2. The open-wide
mouths of the carp-streamers When carps
swim up a hundred waterfalls |
鯉のぼりのイラストはこちらからお借りしました。
龍のイラストはこちらからお借りしました。
以下の文章は私のゼミの特修生で大学院博士前期課程2年生の大塚孝一君の手になるものです。 興味深い比較ですので、同君の了解を得て、転載します。 |
山岸教授の「鯉のぼり」の御訳を拝読し、英語的な表現、翻訳上の配慮などに気がつくことができました。以下の様にまとめましたので、ご一読ください。 @「甍の波と 雲の波」Tiled roof after roof, white cloud after cloud 「波」に対する直訳wavesが用いられていない点に気がつきます。afterがあることにより、実際には視点が動いているのですが、「甍」と「雲」がまるで“動いている”ように感じます。それだけではなく、afterが用いられている方がwavesよりも“奥行き”を感じます。まさに「波」が次々とこちらに向かって迫っている様子を思い浮かべることができるでしょう。 ただ、この箇所はafterだけに注目するのではなく、whiteにも注目すべきです。原詞には「白い」という語はありませんが、日本人がこの詩を読めば、誰もが「白雲」を思い浮かべるでしょう。日本人に共通している感覚を英語に表すことは翻訳には必要な配慮です。この一点だけみても、中・高校で行う“英作文”と、大学で行う“翻訳”には違いがあるということが分かります。 A「橘かおる 朝風に」And in the orange-smelling morning breeze 「朝風」に当たる訳語はmorning breezeとなっています。このbreezeは、orange smellingという修飾句に合っています。「風」にはwindを用いることも可能ですが、breeze(そよ風)があることで、“柔らかく”橘の香りを運んでいる様子が目に浮かびます。windでは、orange-smellingとのバランスが悪くなり、日本語の“柔らかさ”が表現しきれていません。 B「物に動ぜぬ 姿あり」As if they would sport unflappable characters 今回の翻訳課題において、最も難しい歌詞と言えるでしょう。特に、「姿」をそのままfigureなどとすることは誤訳になります。山岸教授は該当箇所をcharacterという語をお使いになっています。鯉のぼりの“外見”だけではなく、その“内面”も注目なさっていることが分かります。さらに言えば、この原詞はあくまでも作詞者の“想像”です。“生き物”ではない「鯉のぼり」が実際に自分のunflappable charactersをsport(誇示する)ことはありません。だからこそ、as ifの仮定法が適切であり、その様子が一層忠実に表されています。 C「百瀬の滝を 登りなば」When carps swim up a hundred waterfalls 文字通りに訳せばclimb upですが、それでは“滝”とのバランスが悪くなります。山岸教授の御訳swim upは、「鯉のぼり」が滝を“泳いで”登っていくことが容易に想像できます。 D「忽ち竜に なりぬべき」People say they suddenly turn to dragons ここでは動詞にbeやbecomeではなく、turnが用いられています。「鯉」から「竜」へ姿を“変える”ことが分かれば、前者のような訳語はまず使われないでしょう。同箇所はやはりturn以外にはあり得ません。 E「わが身に似よや 男子と / 空に躍るや 鯉のぼり」 And the carps now dancing in the sky encourage / Boys and smaller boys to be just like them encourageという訳語があることにより、この鯉たちが自分たちも「滝登り」をしていること、作者が「男子」にその鯉たちのように努めて欲しいと願っていることが分かります。この語が他の語で代用されると、そこにはどこか“よそよそしさ”が表れてしまうように、わたくしには感じられます。 平成26 [2014] 年10月4日 大塚 孝一 |